日本のルーツが残る町、御所

天然醸造にこだわる醤油蔵が
提案する豊かな時間の過ごし方

片上醤油

木桶天然醸造の醤油蔵

御所駅から車で約10分。古事記や日本書紀などにもその名前が登場する葛城一言主 神社から葛城古道を南へ歩いていくと、小さく美しい沢に沿って蔵が立ち並ぶ風景があらわれます。どこからか漂ってくる香ばしい匂いが、そこが醤油蔵であることを知らせてくれます。 御所市にある森脇集落にて、1931年(昭和6年)から醤油づくりに取り組んでいるの醸造所が片上醤油(かたかみしょうゆ)です。「この大豆で作っています、とお客様にちゃんと説明したいんで す」と語る奈良県産の大豆を蒸しあげ、丁寧に麹をつくり、吉野杉で作られた大きな木桶 で自然のままに発酵・天然醸造し、諸味をしぼり、火入れをする。片上裕之さん公美さんのご夫婦と数人の従業員で営まれている小さな蔵には代々引き継がれた醤油づくりのこだわりが凝縮されています。

個性ある醤油を育てる

「この子は去年仕込んだうすくち醤油で、そっちの子は今年仕込んだこいくち醤油です」醤油蔵を 紹介していただいていると、一つ一つの醤油をまるで我が子のように育てている片上さんのこだわりが随所に溢れ出てきます。 例えば、美味しい醤油を作る上でとても大切な工程の一つである麹づくり。仕込みの時期である冬から春にかけては、蒸しあげた大豆に種麹を加え、3日程度かけて麹を作ってはまた新たな大豆を蒸し上げるというサイクルを繰り返します。そんな3日間の麹づくりの2日目の夜は、毎回蔵に泊まり込み、麹の様子を見ているそう。その工程を片上裕之さんはこう教えてくれます。「温度を調整して夜に仕込んで朝まで放置するようでは、美味しい醤油はできないんです。今回の子はどういう個性を持った麹かは、やっぱりちゃんと様子を見てあげないとわからないですから」

醤油を作ることとまちを作ることは表裏一体

そんな小さいけれど個性的な片上醤油さんが、醤油づくりの傍ら取り組まれているのが、 地元である吐田郷地区のまちづくり活動。地元で人気の梅本とうふ店や大正2年築の旧名柄郵便局を再生したTegami Café、そして、まちづくり団体である(社)吐田郷地域ネットなどと連携しながら、醤油づくりのワークショップを開催する他、まち歩き用のマップづくりに取り組むなど精力的に吐田郷地域周辺の活性化に取り組んでいます。
こうしてまちづくりに関わるようになったのは10年ほど前。特に精力的に取り組む奥様の公美さんは「ある時ふと、醤油づくりとまちづくりは一緒なんちゃうかなと思ったんです」と話します。地元のまちが賑わっているからこそ、醤油蔵として存続し続けることができる。醤油蔵としていつまでも愛される商品を作り、片上醤油を訪れる人が増えることで、地元の賑わいにつなげていける。そんな持ちつ持たれつな醤油蔵と地元のまちとの関係をさらに進展させるため、片上さん達ならではの旅の企画がスタートしました。

山麓の村特有の質感ある豊かな時間を届けたい

片上醤油はこれまでも、こだわりの醤油づくりの工程紹介ツアー、醤油の食べ比べ、醤油づくりのワークショップなど、様々なイベントに挑戦されてきました。中でも醤油づくりのワークショップは人気で、毎年参加されるお客様もいるそう。そんな中、公美さんは「今後は醤油蔵だけでなく、このまちならではの独特な時間の流れを味わってもらって、これまでとは少し違う田舎のイメージを持ってもらいたい」と今後の展望を語ってくれました。
現在検討しているのは、醤油蔵に泊まり込んで、麹づくりを一晩かけて体感し、吐田郷のお米と野菜と醤油でとびっきりの朝食を味わう全国初の「醤油蔵ナイトツアー」。この他にも聞いたこともないような個性的なアイディアが生まれてきそうな片上醤油プロデュースのローカル・ツアーにますます期待が高まるばかりです。


片上醤油
〒639-2318 奈良県御所市大字森脇329
TEL : 0120-067-833
http://www.asm.ne.jp/̃soy/


STAFF
Photo : 堀内 康広 trunkdesign-web.com
Text : 澤田 哲也 mitemo.co.jp
柳瀨 武彦
Interviewer : 澤田 哲也 mitemo.co.jp
Art director : 堀内 康広 trunkdesign-web.com